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具体的には、事務リスク規制を入れるにあたって、事務リスクと信用リスクの合計リスク量が増えないようにした。
信用リスクへの自己資本負荷は1割程度軽くなり、その一環として格付けが高い企業向け融資のリスク量を大幅に下げた。
本来的には金融取引の高度化や多様化によって新しいリスクが発生してきているのであれば、その分、資本負荷は増やす必要がある。
それを怠ったパーゼル委のミスが、金融危機の伏線になった。
あるスイスの有力金融機関のトップは、「パーゼルEは事務リスクにこだわりすぎて失敗した」と評している。
リスクを測る指標として、vaRを用いていることも問題含みだ。
vaRは予想最大損失額で、リスクを統計学的に精般に分析できる。
しかしVaRは、過去3年などの比較的短い期間の観測に基づき計算されており、必ずしも正しいとはいえない。
参照する期間を延ばしたとしても、モデルは、めったに起きない大きな影響を及ぼすようなショックを過小評価する傾向がある。
金融規制改革案を示した英国のT ・Rは「VaRで使われるモデルは、相場の変動に反応する個々の金融機関の動きは規模が小さく、市場の均衡に影響を与えない前提になっている。
しかし多くの市場参加者が同時に同じような方向で動くと、その前提は狂う」と指摘。
実際、町年春の金融システミツクリスクが高くなっていたときに、vaRのモデルは「リスクは低く、下がりつつある」とのメッセージを出していたとしている。
そもそも過去の分析に基づくリスク発生パターンが、将来のリスク発生パターンにつながる保証はない。
過去に起きたことは参考にはなるかもしれないが、それを高度な数学や統計学を使って、精織な将来予測のモデルを作ることには限界がある。
ましてや過去のパターン分析でVaRが小さいからといって、それに合わせてリスク量は小さいので、より多くのリスクを取れるとするパーゼルEの考え方は誤っている可能性がある。
欧州の金融当局関係者は「パーゼルI」の方がリスクのとらえ方は大雑把かもしれないが、金融機関がリスクを意識し、それに備えるという意味では優れていたのではないか」と指摘する。
パーゼルEは、リスクを取って収益を上げたいという金融機関のリスク削減要望を最大限受け入れており、規制としては失敗だった。
もうひとつ大きいのは、リスクの測定に関して、さまざまなモデルの利用を認めたことだ。
パーゼルEは信用リスクをつかむにあたって、3つの手法を用意した。
ひとつは出来合いの格付けを使う手法だが、格付けを規制の根幹に据えている点が大きな問題だ。
パーセルIは信用力の高い企業向け融資のリスクは低く、低い企業向け融資のリスクは高いので、それを格付けで調整すればより正確なリスク量がつかめると考えた。
しかし、金融危機では、格付け会社の格付けの精度が問われた。
有力格付け会社のS&PやMが最上級を付けた金融機関の発行したCPが、債務不履行を起こしている。
各国当局が認めれば、SECに登録していない格付け会社の格付けも使われることになり、信頼性は怪しい。
危機で揺らぐ格付けに立脚したままでは、規制の信頼性も疑われる。
それに加えてパーゼルEは、デフォルト率だけ使える基礎的内部格付け手法と、デフォルト率に加えデフォルト損失率など、ほぼすべての指標を使える先端的内部格付け手法の利用を認めた。
欧米の有力金融機関が自ら使っている内部モデルの方が、格付け会社の格付けを使うより優れているのでその利用を認めてほしいと求め、パーセルIが認めた。
しかし、内部モデルの利用はリスクの実態をゆがめやすい。
銀行が貸し出しを増やしたいと思えば、内部モデルの格付けを甘くすればいい。
減らしたいと思えば、逆に内部モデルの格付けを厳しくすればいい。
格付け会社がいいかげんだといっても、銀行の抱えるリスクの評価は第三者がすることになり、それに基づくリスク量に客観性が伴う。
しかし内部モデルを使ったリスク量の把握には、客観性が全く伴わない。
これでは、健全性を示す指標としての信頼性は回復できない。
そもそも自ら使っている内部モデルが優れていると主張していた欧米金融機関は、相次いで巨額の赤字を計上し、公的資金を投入された。
サブプライムローン問題は金融機関が使っていた内部モデルが優れていなかったことを明確に示しており、パーゼルEの内部モデルの根幹がすでに崩れているのは誰の目にも明らかだ。
パーセルIに求められるのは、自ら作ったパーゼルEの手直しではなく、その欠陥を認めたうえでのパーゼルEの全面的な見直し、すなわちパーゼルEだ。
パーセルIのメンツは潰れるかもしれないが、それなくしては銀行の憲法ともいえる自己資本比率規制への信頼は回復せず、銀行システムへの信認も戻らない。
2008年3月末、米国の全上場企業の最高財務責任者(CFO)に、SECから手紙が届いた。
サブプライムローン問題が深刻になる中で、盛られていたのは実質的な時価評価の後退だった。
危機対応として、市場の時代に最重視してきた時価評価を棚上げしたものだった。
手紙が取り上げているのは、米財務会計基準審議会(FASB)が導入した新会計基準「FAS157」だった。
企業がそれに基づくSEC提出書類(フォームmlk)を作る際の、考え方を示していた。
FAS157は、有価証券を3つに分類している。
流動性が高く時価が測れるレベル1、参照できる指標があるレベル2、取引が薄く時価がないレベル3だ。
手紙は、広範な有価証券をレベル3に分類できるとしていた。
本来レベル2に入るものでも今は市場がゆがんでいるとの解釈だ。
レベル3については、どういう方法で評価したかのモデルを開示するよう求めていた。
例えば、サブプライムローンを組み込んだ証券化商品などのレベル2の参照価格は、トリプルA格でも元の価格程度だった。
それをレベル3とみなし、開示モデルによる評価を公正価格(フェアーバリュー)として構わないというわけだ。
開示モデルさえしっかりしていれば、評価することも可能だった。
それによって、金融機関のサブプライムローン関連損失を減らす効果が期待できた。
レベル2には、債務担保証券(CDO)やLBO(借り入れで資金量を膨らました買収)融資など、かなりの資産が入った。
一部の会計士は、レベル2を市場の参照価格を使って厳格に評価する姿勢だった。
その場合、債務超過に陥る金融機関が出て、連鎖破綻が起きかねなかった。
SECは会計士を牽制して、金融メルトダウンを防ごうとした。
9月には、時価評価後退は一段と明確になった。
米財務省は金融安定化法案の中で「SECが適当と判断した場合は、時価会計を停止できる」との条項を盛り込んだ。
サブプライムローン関連の証券化商品を厳格に時価評価した場合、大手金融機関に巨額の損失が発生し、一部は債務超過に陥る可能性があった。
法案がめざす金融安定化のためには大手金融機関の債務超過を回避する必要があり、その手段のひとつに時価会計の停止を位置付けた。
法案は下院でいったん否決されたが、結局、可決、成立した。
こうした動きを横目に、SECも時価評価との距離を置く姿勢を鮮明にした。
まず「現在の環境は公正価値を決めにくい」と指摘。
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